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黄斑・硝子体外来

黄斑・硝子体外来担当医

専門外来名 担当医
黄斑・
網膜硝子体外来
高瀬 博(※) 前東京医科歯科大学 病院教授
岡本 史樹(※) 日本医科大学 教授
小畑 亮 虎の門病院 部長
東京大学 准教授
森 樹郎 前虎の門病院 部長

※ 執刀医

専門外来
スケジュール

黄斑とは?

黄斑とは?
図1 左眼の眼底写真。矢印の部分が黄斑

眼底にある網膜の中心の数mm程度の領域を指します。じっと見た時の視線の中心にあたる部分です。ものを見る細胞が集中しており、良い視力を担当するために必要不可欠な部分です。

黄斑におきる病気

網膜に体液や出血が溜まったり[滲出]、網膜が引っ張られて変形したり穴が開いたり[牽引]、網膜の細胞が傷んで無くなる[萎縮]などのいずれかまたは複数を呈する様々な病気があります。

症状

黄斑の異常は、視力低下、中心暗点、ゆがみ、色の見え方の異常などを生じます。異なる病気でも同じ症状が出ることがありますし、同じ病気でもやや異なる症状を感じることがありますので、検査での確認が大切です。特に片目ずつ確認しないと自分では気づかないことが多いので注意が必要です。

変視症
変視症
中心暗点
中心暗点
色彩異常
色彩異常

主な病気とその診断

①加齢黄斑変性・滲出型

加齢に伴い黄斑部の網膜および脈絡膜に変性が生じる病気です。そのうち滲出液がたまったり出血したりするものを滲出型といいます。これは主に脈絡膜新生血管(黄斑部新生血管)が出現することによって生じ、悪化のスピードが早い特徴があります。診断は眼底検査、OCT、OCT-Aなどで新生血管を確認することが中心となります。治療は抗VEGF療法や光線力学療法、レーザー光凝固術などがありますが、病気自体が無くなることは無いため、継続した経過観察と時機を逸しない治療が大切です。

正常眼の黄斑OCT(光干渉断層撮影)
図2-a 正常眼の黄斑OCT(光干渉断層撮影)
加齢黄斑変性の黄斑OCT
図2-b 加齢黄斑変性の黄斑OCT

さらに詳しい説明

②加齢黄斑変性・萎縮型

加齢黄斑変性のうち、新生血管を伴わずに網膜・脈絡膜が徐々に萎縮するタイプです。診断には眼底検査、OCT、眼底自発蛍光などを行います。上記の滲出型加齢黄斑変性に萎縮が伴うこともあります。ルテインほか抗酸化物質摂取がサプリメントも含めて推奨されますが、残念ながら現時点では確実なエビデンスのある治療法はありません。

③中心性漿液性脈絡網膜症

網膜の奥にある脈絡膜血管からの滲出液が黄斑の網膜に溜まります。自然に引くことが多いものの、繰り返す場合もあります。慢性化すると網膜が萎縮してしまうので治療を検討します。診断には眼底検査、OCT、眼底自発蛍光検査などに加えて、およそ50代以降であればOCT-Aなどを用いて新生血管合併の有無を確認します。治療が必要な場合は、原則として造影検査を行い状況を詳しく確認した上で、レーザー治療などを検討します。

  • 中心性漿液性網脈絡膜症の黄斑OCT
  • 中心性漿液性網脈絡膜症の黄斑OCT

図3 中心性漿液性網脈絡膜症の黄斑OCT

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④網膜静脈閉塞症

網膜の静脈が詰まり、血流が不足して見え方が障害されます。動脈硬化が主な原因ですがそれがなく発症する方もいらっしゃいます。黄斑に浮腫(血液や滲出液がたまること)などを起こすと一層見えづらくなります。診断には眼底検査、OCT、OCT-A、必要時に造影検査などを行います。治療は、黄斑浮腫に対する抗VEGF治療や、レーザー治療などが状況により行われます。

  • 網膜静脈分枝閉塞症の眼底写真
    図4-a 網膜静脈分枝閉塞症の眼底写真
  • 網膜静脈分枝閉塞症による黄斑部浮腫のOCT
    図4-b 網膜静脈分枝閉塞症による黄斑部浮腫のOCT

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⑤黄斑上膜または黄斑前膜、黄斑円孔

網膜に付着した膜に、黄斑の網膜が引っ張られ、変形したり穴が開いたりすることで見えづらくなります。診断には眼底検査とOCTが主に用いられます。治療としては程度に応じて硝子体手術が行われます。

黄斑上膜(黄斑前膜)のOCT。網膜の表面に膜が張っている(矢印)
図5 黄斑上膜(黄斑前膜)のOCT。網膜の表面に膜が張っている(矢印)
  • 黄斑円孔(矢頭)の眼底写真
    図6-a 黄斑円孔(矢頭)の眼底写真
  • 同部位(矢頭)のOCT
    図6-b 同部位(矢頭)のOCT

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⑥強度近視に関連した黄斑の病気

およそー6ジオプター(メガネの強さの単位)より強い近視の場合は、通常よりも少し多くの数・種類の黄斑の病気が、より若年齢から発生する傾向があります。種類としては牽引によるもの[近視性牽引性黄斑症]、新生血管によるもの[病的近視における脈絡膜新生血管]、萎縮[近視性網脈絡膜萎縮]によるものなど様々です。中心部分の見え方がいつもと違う場合には、検査(視力検査・眼底検査・OCTなど)を受けることが勧められます。

  • 近視による脈絡膜新生血管の眼底写真(矢印)
    図7-a 近視による脈絡膜新生血管の眼底写真(矢印)
  • 同部位のOCT
    図7-b 同部位のOCT

⑦その他の視力低下

視力が病気により低下していても、通常の検査では所見が目立たず、診断がつくまでにより詳しい検査(自覚的視機能検査、画像検査、電気生理学的検査)が必要な場合があります。検査は基本的に入院不要であり、体の負担もほとんどないものが多く、目的に合わせて計画していきますのでご安心ください。

主な検査機器

黄斑の異常は、視力低下、中心暗点、ゆがみ、色の見え方の異常などを生じます。異なる病気でも同じ症状が出ることがありますし、同じ病気でもやや異なる症状を感じることがありますので、検査での確認が大切です。特に片目ずつ確認しないと自分では気づかないことが多いので注意が必要です。

  • OCT、OCT-A、眼底写真:DRI OCT Triton
  • OCT、OCT-A、眼底写真:DRI OCT Triton

OCT、OCT-A、眼底写真:DRI OCT Triton

  • 広角眼底写真、自発蛍光:Daytona Next
  • 広角眼底写真、自発蛍光:Daytona Next

広角眼底写真、自発蛍光:Daytona Next

  • 皮膚電極ERG:HE-2000

皮膚電極ERG:HE-2000

治療方法

抗VEGF療法(硝子体注射)

抗VEGF療法(硝子体注射)

加齢黄斑変性や糖尿病網膜症などの網膜の疾患では、黄斑部分(網膜の中心部分)がむくんだり、もともとはなかったところにあらたに新生血管が生じたり、歪みや視力低下などの症状がおきます。
これらの疾患では、体内のVEGF(血管内皮増殖因子:けっかんないひぞうしょくいんし)という物質が、新生血管の増殖や黄斑浮腫の悪化に関与していることがわかっています。VEGFは、目の中で、①本来存在しない異常な新生血管を発生させ、成長を促進、②通常は漏れ出ることがない血液成分を血管から漏れ出やすくさせる働きをします。このVEGFの働きを抑える抗VEGF薬を目の中の硝子体(しょうしたい)へ注射し治療する方法が、抗VEGF療法です。

注射前の網膜断面図
注射前の網膜断面図
注射後の網膜断面図
注射後の網膜断面図

治療の対象となる病気

① のタイプ:

  • 中心窩下脈絡膜(ちゅうしんかかみゃくらくまく)
  • 新生血管を伴う加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)
  • 病的近視(びょうてききんし)における脈絡膜(みゃくらくまく)
  • 新生血管(しんせいけっかん)
  • 血管新生緑内障

② のタイプ:

  • 網膜静脈閉塞症(じょうみゃくへいそくしょう)を伴う黄斑浮腫(おうはんふしゅ)
  • 糖尿病黄斑浮腫

抗VEGF薬の種類

ルセンティスⓇ、アイリーアⓇ、ベオビュⓇ、バビースモⓇ

方法

瞳を広げるための散瞳薬(さんどうやく)を点眼したあと、点眼麻酔をします。その後、目の周りを消毒して、薬を硝子体へ注射します。また、この治療は1回で終了するものではありません。薬の効果が切れると再び症状が現れるため、病状によって治療のスケジュールを決定します。

副作用

まれですが、眼内炎(がんないえん)という重大な感染症の報告があります。予防のため、処方された点眼液をきちんと点眼し、目を清潔に保ってください。その他、結膜下出血、眼圧上昇、眼痛(がんつう)、視力低下などがあります。

網膜光凝固術(レーザー光凝固術)

網膜光凝固術は、網膜に特定の波長のレーザー光線を当てて網膜を焼き固めることにより、網膜の病気の進行を抑える治療です。目を元の状態に戻す治療ではありませんが、眼底の病気には欠かすことのできない重要な治療法です。

レーザー光凝固術
レーザー光凝固術
網膜断面図
網膜断面図

治療の対象となる主な病気

  1. 糖尿病網膜症・網膜静脈閉塞症
    血流が悪化し酸素不足となった網膜にレーザーを照射して、細胞の酸素不足を改善し、むくみや新生血管の発生を防ぎます。
  2. 網膜裂孔(れっこう)(軽症の網膜剥離)
    網膜のさけ目や孔(あな)のまわりにレーザーを照射して、網膜がはがれるのを予防します。
  3. 中心性漿液性網脈絡膜症(ちゅうしんせいしょうえきせいもうみゃくらくまくしょう)
    脈絡膜からもれ出た水で網膜がふくれている場所にレーザーを照射して、回復を早めたり再発を予防したりします。
方法

瞳を広げるための散瞳薬を点眼したあと、点眼麻酔をします。その後、レーザー光を異常な組織や血管に照射します。網膜症の進行具合によって、レーザーの照射数や照射範囲が異なります。照射後はしばらく安静にしています。手術後に比較的速く日常生活に戻ることができます。術後に眼底の検査を行います。また、糖尿病網膜症など病気の種類や状態に応じて、複数回照射が必要な場合があります。通常、外来で行います。

副作用

照射数が多いと、鈍痛を感じることがあります。また、一過性の眼圧上昇、一時的な視力の変化、黄斑部浮腫が生じることがあります。まれに瘢痕(はんこん)形成、網膜損傷など。

光線力学療法(PDT)

加齢黄斑変性では、黄斑部(網膜の中心部分)に新たに新生血管が生じることがあります。PDTは、周りの正常な組織に影響を与えずに、この新生血管だけを閉塞(へいそく)、消退(しょうたい)させる治療法です。

方法

瞳を広げるための散瞳薬を点眼します。その後、新生血管に集まる性質をもち、特殊な波長のレーザー光に反応するビスダイン®という薬剤を腕の血管から10分かけて注射します。点眼麻酔の後、黒目の上にコンタクトレンズをのせて、レーザーを新生血管のある病変部(びょうへんぶ)に照射します。治療の前に蛍光眼底造影(けいこうがんていぞうえい)検査を行い、病変の大きさを確認してレーザーの照射範囲を決定します。治療には専用のレーザー装置が必要であり、眼科PDTの認定医が行います。3ヶ月ごとに蛍光眼底造影検査を行い、再治療の必要があればくり返し行います。PDTは、東大病院にて治療を行います。

副作用

48時間は光過敏症となるため、目や皮膚などを直射日光や強い室内光に当てないよう注意する必要があります。その他、変視症(ものが歪(ゆが)んで見える)、霧視(かすんで見える)、視力低下、頭痛などがあります。

当院では光線力学療法を実施する際は、東大病院など連携施設で実施いたします。

網膜硝子体手術

網膜硝子体手術

目の奥を満たしている透明なゼリー状の硝子体を切除する手術を硝子体手術といいます。網膜剥離、硝子体出血、増殖糖尿病網膜症、黄斑上膜、黄斑円孔、網膜静脈閉塞症、眼内炎、水晶体核落下(すいしょうたいかくらっか)などを治療するために行われます。

方法

目への麻酔後、白目に3か所の小さな穴を開け、目の中を照らす照明や内視鏡、硝子体カッターを入れます。目の形を保つために灌流液(がんりゅうえき)を眼内に入ながら、硝子体カッターで硝子体を細かく切りながら、硝子体内に出血した血液を吸引したり、剥がれた網膜を元にもどしたりします。病気によっては、網膜への治療(レーザーで網膜の孔(あな)を固める、網膜上の膜を除去するなど)を追加で行います。切除した硝子体の代わりに灌流液を入れ、手術を終了します。病気や目の状態によっては、灌流液の代わりに、空気やガス、シリコンオイルなどを入れる場合もあります。

合併症

目の感染症、網膜剥離、角膜障害、緑内障、黄斑浮腫などがあります。