飛蚊症(目の中に黒い点が見える)とは
飛蚊症は、視界に小さな糸くずや虫のような物体が浮かんで動いて見える状態を指します。
これらの浮遊物は、形状や大きさが異なり、目の動きに従って動くことが特徴です。初めて体験すると鬱陶しさを感じることが多いですが、時間が経つにつれて視覚的な変化に慣れる人が多いです。飛蚊症は様々な年齢層で発生しますが、特に高齢者や近視の強い人が症状を自覚しやすいとされています。
飛蚊症の多くは生理的な原因によるもので、通常は心配の必要がありませんが、場合によっては網膜剥離や網膜裂孔、眼底出血など、重大な眼疾患の兆候として現れることがあります。
これらの疾患は放置すると失明につながる可能性があるため、飛蚊症が発生した場合は眼科を受診し、適切な診断・治療を受けることをお勧めします。
飛蚊症の原因
飛蚊症(目の中に黒い点が見える)の正体は硝子体内の濁りです。
飛蚊症は、眼球内部の硝子体というゼリー状の物質が濁ることによって起こります。主に明るい場所で物を見る際、硝子体内の濁りが網膜に影を落とし、糸くずや虫のように見える浮遊物が飛んでいるように感じるのが特徴です。
硝子体が濁る原因には、加齢に伴う生理的なものと、網膜剥離や網膜裂孔など病的な状態によるものの二種類があります。
加齢に伴う原因(生理的飛蚊症)
年齢を重ねるにつれて、硝子体が変化することで小さな浮遊物などが発生し。この浮遊物が網膜に影を落とすことで、視界に黒い点や糸状の影として見えるようになります。この場合は、治療の必要性はありません。ただし、定期的に眼科で検査を受けるようにしましょう。
病的な原因(病的飛蚊症)
飛蚊症の9割以上は生理的な原因によるものですが、目の病気のサインとしても飛蚊症が現れる場合もあります。
網膜裂孔・網膜剥離
眼底には神経細胞から成る膜が広がっており、これを網膜といい、光を感じ取る役割を持つ組織です。この網膜に穴が開いたり裂け目が生じることを網膜裂孔と呼びます。網膜裂孔をきっかけに網膜が眼球の内壁から剥がれる網膜剥離へと進展することがあります。
網膜裂孔の初期症状として飛蚊症が現れることがあります。網膜剥離が進むと、視野欠損が生じ、特に網膜の中心部である黄斑部に達すると、急激な視力低下が発生します。また、網膜剥離は放置すると失明の危険があるため、早期治療が必要となります。
硝子体出血
硝子体は本来血管を持たない組織ですが、高血圧、糖尿病、外傷などが原因で眼底に出血が発生すると、硝子体内に血液が溜まることがあります。これを硝子体出血と呼びます。
出血量が多いと視力が落ちますが、少量~中等度の硝子体出血で飛蚊症が現れることがあります。
ぶどう膜炎
ぶどう膜は虹彩(瞳孔の大きさを調整する)、毛様体(水晶体の厚みを調整しピントを合わせる)、脈絡膜(網膜に栄養を供給する)から構成され、多くの血管が通る重要な組織です。このぶどう膜またはその周辺組織に炎症が生じた状態をぶどう膜炎と呼びます。
ぶどう膜炎では硝子体が混濁し、飛蚊症が現れることがあります。
飛蚊症の検査
飛蚊症には重大な病気の前兆であるものと、比較的無害なものが存在します。重要なのは、これらをどう区別するかです。飛蚊症の症状が悪化した場合、最も重要な検査は眼底検査です。この検査では検眼鏡を使用して瞳孔から眼球の奥、網膜の状態を詳しく調べます。
眼底検査で飛蚊症が生理的なものと判定された場合は、過度に心配する必要はありません時間が経つにつれて、これらの浮遊物に気づかなくなることはありますが、完全に消失することはありません。
飛蚊症の治療
加齢などの生理的な原因による飛蚊症は通常、治療を必要としません。飛蚊症が何らかの目の病気の兆候である場合、それぞれの病気に応じた治療を行います。視力を維持するために早期の治療を必要とする病気もありますので、飛蚊症を自覚したら早めに眼科を受診しましょう。