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角膜外来

角膜外来担当医

専門外来名 担当医
角膜外来 宮井 尊史 東京大学 准教授
宮田 和典 当院 理事長
宮崎大学 臨床教授

担当医師からのメッセージ

角膜は目の表面にあるため、ドライアイや角膜炎などを含めると角膜疾患は非常に多くの人に関係する疾患でもあります。目の違和感や不快感、痛み、視力低下感などの症状で発症することが多いですが、当院角膜外来では、角膜疾患の経験豊富な角膜専門医による診療を行っています。

現在、新しい治療も含めて角膜疾患は多彩な治療選択肢がありますが、患者様の病状に応じた疾患についての丁寧な説明・治療を行っており、また難治性疾患については大学病院と連携した最適な治療法のご提案を行ってまいります。

また、当外来では角膜移植後の方の適切な経過観察も行っております。
ほか病状や治療法などについてご不明な点がありましたら、担当医にご相談ください。

専門外来
スケジュール

角膜について

図1 角膜のシェーマ
図1 角膜のシェーマ

角膜は目の表面にある透明な組織であり、上皮、Bowman膜、実質、Descemet膜、内皮の5層構造で構成されています。物を見るためのレンズの機能、外界と隔てるバリア機能をもっています。角膜は目の中への光の通り道になるため視力や見え方に影響するだけでなく、痛みを伝える神経が高密度で張り巡らされており、痛みに対して鋭敏な組織でもあります。

代表的な疾患

ドライアイ

目の表面の涙が乾燥して起こる病態です。シェーグレン症候群などの膠原病が関連することや、眼の縁の脂腺であるマイボーム腺に関連して起こる場合があります。

症状

目の違和感、異物感、乾燥感といった症状を生じます。重篤な場合は視機能に影響がある場合があります。

治療

目を潤すための人工涙液、ヒアルロン酸点眼及びムチンを補充する点眼(レバミピド、ジクアス)など病態に応じた点眼治療を行います。点眼だけで不十分な人には涙点プラグというシリコン製のプラグを涙点に入れて涙をためる治療法を行います。

関連サイト

日本眼科学会HP(ドライアイガイドライン)

角膜炎/角膜潰瘍

図2 角膜潰瘍
図2 角膜潰瘍

細菌や真菌、アメーバなどの微生物が角膜に感染する病気です。進行すると角膜に穴が開くこともあります。

症状

充血、疼痛を生じます。角膜潰瘍では視力低下を来すこともあります。

治療

抗生剤の点眼治療が基本になりますが、薬剤耐性菌、真菌やアカントアメーバなど一般的な抗生剤では効きにくい感染症もあります。難治性の場合、大学との適切な病診連携を通じて治療を行います。

関連サイト

日本眼科学会HP(角膜感染症ガイドライン)

円錐角膜

図3 円錐角膜
図3 円錐角膜

角膜が突出して不正乱視が強くなる病気です。

症状

強い乱視による視力低下を生じます。不正乱視のため眼鏡での矯正が難しくなります。

治療

ハードコンタクトレンズによる矯正を行います。角膜の突出が進行している方は、角膜クロスリンキングという治療を行うことがあります。クロスリンキングはリボフラビンを点眼し、長波紫外線を照射して角膜のコラーゲンを架橋する治療法で、円錐角膜の進行を止めることができます。

角膜クロスリンキング

クロスリンキングは、リボフラビンというビタミンB2を点眼して、365nmの紫外線を角膜に照射する治療法です。この治療により、角膜組織にフリーラジカルという物質が発生し、角膜組織のコラーゲン同士をくっつけ(コラーゲン架橋(かきょう))、角膜を強く硬くします。円錐(えんすい)角膜は進行するにしたがって角膜が変形していく病気なので、角膜を硬くすることで変形の進行を抑えることができます。この治療法は欧米を中心に世界中で円錐角膜の標準治療として行われており、角膜移植まで至る円錐角膜の症例が減少しています。
当院では、患者の目の動きを追跡し、角膜形状に合わせて紫外線照射のパータンと紫外線量を変えて照射する精度の高いモザイク®システムを導入しています。

方法
  1. 手術する目に麻酔を点眼します。
  2. 角膜の一番上の部分の角膜上皮を剥離させる場合もあります。
  3. リボフラビン溶液を約10~20分間点眼します。
  4. 紫外線を照射します。照射中もリボフラビン溶液を2分間に1滴のペースで点眼します。
  5. 保護用のコンタクトレンズを付けます。
合併症

この手術は比較的安全な手術方法で、合併症はほとんど起こりませんが、まれに以下のような合併症が生じることが考えられます。また、術後は角膜の表面が傷んでいるため、2~3日間は痛みがあり、見え方が元に戻るまで1~2週間程度かかります。

  1. ヘイズ:角膜にうすい混濁が生じることがあります。
    多くの場合は、ステロイド点眼液で混濁は消えます。
  2. 感染症:術後感染症を起こす可能性があります。
    通常、抗菌薬の点眼や点滴にて治療しますが、眼内洗浄が必要な場合もあります。

角膜ジストロフィ

先天性・両眼性に見られる角膜混濁です。年齢とともに進行するものが多く見られます。

症状

徐々にかすみ、視力低下が強くなってきます。

水疱性角膜症

角膜実質から水を汲みだすポンプ機能をもつ角膜内皮細胞が障害されて角膜に浮腫がおこります。

症状

角膜の浮腫によるかすみ、視力低下を生じます。朝に症状が悪化しやすい特徴があります。進行すると、痛みを生じることがあります。

関連サイト

日本眼科学会HP(水疱性角膜症重症度分類)

角膜輪部機能不全

角膜表面にある透明な角膜上皮細胞をつくる角膜上皮幹細胞が障害される病態です。結膜が角膜に侵入してきます。

症状

充血を生じ、結膜が角膜の中まで入ってくると視力低下を生じます。

角膜ジストロフィ、水疱性角膜症、角膜輪部機能不全の治療

図4 角膜移植のシェーマと移植後の前眼部写真
図4 角膜移植のシェーマと移植後の前眼部写真

根治のためにはいずれも角膜移植や再生医療が必要な疾患です。
角膜移植にも様々な種類があり、大学との適切な病診連携を通じて治療を行います。

翼状片/再発翼状片

主に鼻側の結膜が角膜に入ってくる病態です。手術で切除しても再発しやすい特徴を持っています。

症状

進行すると乱視、視力低下、充血を生じます。

治療

切除を行う際に有茎結膜弁移植や遊離結膜弁移植、マイトマイシンCなど再発を起越しにくくする方法を用いて手術を行います。

  • 図5-a 翼状片手術前図5-a 翼状片手術前
  • 図5-b 翼状片手術後図5-b 翼状片手術後

検査機器/治療機器

前眼部光干渉断層計 CASIA2

測定光に赤外線を用いているため、角膜が混濁している目においても、目の前側の様子を正確に測定することができ、その断層像を得ることができます。角膜前後面の屈折、角膜厚、角膜の混濁の程度、前房深度、など多くの項目を一度の測定で計測することができます。角膜潰瘍における角膜の菲薄化、円錐角膜における角膜突出の進行度、水疱性角膜症における角膜の浮腫の程度、翼状片における角膜乱視の程度など様々な疾患に用いることができます。

  • 図6 前眼部OCT CASIA2
    図6 前眼部OCT CASIA2

スペキュラーマイクロスコープ

角膜内皮細胞の形態を撮影し、密度や大きさ、形のばらつきを測定します。角膜内皮細胞はヒトの生体内では増えることのない細胞で、年齢とともに減少し、コンタクトレンズ装用や白内障手術などの内眼手術でも減少することが知られています。スペキュラーマイクロスコープは鏡面反射の原理を用いて角膜内皮細胞の形を撮影し角膜内皮細胞の状態に関する検査を行います。

  • 図7 スペキュラーマイクロスコープ画像
    図7 スペキュラーマイクロスコープ画像