白内障は手術しなくても治る?
自然に治癒する?
白内障は、加齢・病気・ケガなどにより目の中の水晶体が濁り視力が低下する病気です。一度濁ってしまった水晶体が自然に元に戻ることはありません。点眼によって進行を遅くできる可能性はありますが、最終的な治療は手術だけです。
白内障手術のタイミングは?
手術を実施する基本となる目安は、見え方に満足できなくなり、日常生活に不自由を感じるようになってきたときです。白内障は、初期の段階ではあまり目立った症状はありません。また徐々に進行していくため、すぐに症状を自覚することはありません。見えにくさや違和感があっても、症状が軽度で日常生活に支障がない場合には手術をせずに、定期的な検査で白内障の状態を確認します。
不自由がなくても手術をしないと危険なことも稀にあるので、医師に相談して下さい。
手術前の検査
白内障の手術前には色々な目の検査を行います。
白内障以外の眼の疾患の有無を調べます。
白内障以外の疾患がある場合、白内障手術をしても期待通りの結果が得られないこともあります。通常の術式に耐えられない眼のつくりをされている方もいらっしゃいます。そのため、手術前にしっかりと目の状態を把握する必要があります。
角膜内皮細胞の検査
角膜の一番内側を覆って、角膜を透明に保つ働きをしているのが、角膜内皮細胞です。細胞数を測定する検査です。
白内障手術をすると、角膜内皮細胞の数はわずかですが減少します。細胞数が十分にあれば問題はありませんが、元々細胞数が少ない人では、角膜が混濁しやすく、術後の視力の回復が十分でなかったり、将来的に視力が低下したりする可能性があるため、注意が必要です。
前眼部OCT(CASIA2)の検査
眼球に直接触らずに角膜表面から眼球の中を3D立体像として撮影できる検査です。円錐角膜や角膜混濁などの角膜疾患や角膜のカーブなど形状を測定する検査です。
不正乱視や、角膜の形状の異常につながる角膜疾患がないかどうかを調べます。角膜の形状の異常は、術後見え方に大きな影響があるため、ゆがみや角膜の厚さを考慮した計算方法で眼内レンズの度数を決定する必要があります。
眼底検査
網膜や視神経などを調べます。
OCT(Optical Coherence Tomography=光干渉断層計)検査
緑内障や、加齢黄斑変性をはじめとする黄斑疾患が網膜にあるかを確認します。
OCTは「光干渉」という現象の原理を利用して、網膜の断層を撮影します。表面を見るだけでは分からない深部の状態や、従来の方法では緑内障かどうか判断が難しかった初期段階の状態も、断層を調べることでくまなく確認できます。
その他、視力・眼圧など眼の現状を調べる検査や、血液検査、血圧測定など全身の健康状態を確認する検査も行います。
眼内レンズの度数を決定するための検査
手術で眼内に挿入する人工レンズを最適なものにするため、眼球形状の正しい測定は非常に重要です。
眼軸長(がんじくちょう)の検査
眼軸長は、角膜の頂点から網膜までの眼球の長さを指します。眼軸長が正常より短いと遠視、長いと近視になります。
光干渉断層撮影技術を使って計測します。眼内レンズの度数は一般的に、眼軸長と角膜曲率半径の値を使って計算します。そのため、手術後の見え方を左右する非常に重要な検査です。
白内障手術はどんな手術?
白内障手術は視力低下やみえづらさの原因である濁った水晶体を取り除き、人工レンズ(眼内レンズ)を入れる手術です。手術用顕微鏡を使用して行われ、通常、局所麻酔(点眼麻酔)で10分から15分くらいで終了します。
現在最も多く行われているのが「水晶体超音波乳化吸引術+眼内レンズ挿入術」です。水晶体を包んでいる袋の前面(前嚢)を円形に切り開き、超音波で水晶体を砕きながら吸い取ります。嚢内をきれいに磨いた後に、眼内レンズを挿入します。
眼内レンズとは?
吸い出した水晶体の代わりとなる人工水晶体です。
手術は痛いですか?
手術前は局所麻酔(点眼麻酔)をします。痛くて手術中断となることは、ほぼありません。さわられる感覚はありますので、不快な場合はおっしゃって下さい。麻酔を追加します。
手術している所が見えますか?
手術顕微鏡の光のまぶしさを感じたり、何かが動いているのは見えることはありますが、手術の道具がはっきりと見えることはありません。「何だかよく分からないがまぶしい」という感じです。
眼内レンズのこと
-どんなレンズがあるの?どこにピントを合わせたらいいの?-
眼内レンズは水晶体のように厚みを変化させて全ての距離にピントを合わせることができないため、手術後のライフスタイルに合ったレンズを選ぶことが大切です。近くを見ることが多い人はピントを近くに、運転などでは遠くにピントを合わせます。ご自身の生活や希望を眼科医にしっかり伝えて相談しましょう。
遠方・近方ってどのくらいの距離?
単焦点眼内レンズ
ピントが合う距離が1つ(メガネなしで見える距離が限られる)
見え方の質:良い(ピントを合わせた一点はとてもよい)
遠くまたは、近くの1ヵ所にピントを合わせます。
読書やスマートフォン、パソコンなど近くを見ることが多い方は、近くにピントを合わせて、遠くを見るときは眼鏡が必要です。スポーツや車の運転など遠くを見る事が多い方は、遠くにピントを合わせて近くを見るとき時は眼鏡が必要です。
多焦点眼内レンズ
ピントが合う距離が複数(メガネなしで見える距離が広い)
見え方の質:おおむねよい(単焦点と比べ、ややぼやける・まぶしい)
複数の距離にピントを合わせます。
単焦点レンズと比較して、眼鏡をかけることが少なくなります。見える範囲は広くなりますが、単焦点レンズに比べるとピントがあまく光がまぶしくぼやける感じなどあり、見え方に慣れるまで多少違和感が生じることがあります。
乱視用眼内レンズ
乱視とは、角膜や水晶体にゆがみがあるため、1点にピントが合わず、ものがぼやけて見えてしまう状態をいいます。丸いカーブ型の角膜が、ラグビーボール型にゆがんで起こる乱視を正乱視と言います。白内障手術で、乱視が減らせることもありますが、一般的に乱視は残ります。正乱視の強い方では乱視矯正も可能な乱視用の眼内レンズ「トーリック眼内レンズ」を使用できることがあります。医師とご相談ください。